LLC制度研究会 世話人 齋藤旬 1957年生まれ東京都出身
e-mail: junsaitoアットeml.llc-research.jp
2018.08.04 記
1990年代の米国シリコン・バレーは活気に満ちていました。「異様な熱気」と言った方がいいかもしれません。スピン・アウト、ヴェンチャー、アントレプレナー,,,
即ち、IBMやHPなどに勤めていたエンジニア達がそういった大手企業をやめて独立。新たな会社を設立し自分のテーマに「没頭」するのです。シリコン・バレーの人々が次々と。
【没頭】何もかも忘れて、ある物事に熱中すること。精神をつぎこむこと。没入。(広辞苑)
当時の私は30歳台。日本の某光学機器メーカのエンジニアでした。仕事の関係で毎月のように米国出張があり、この「熱気」をまのあたりにしました。そして、1991年のバブル崩壊に苦しむ日本と比較し日米のこの「彼我の差」に驚きました。「なぜ?」と思いました。
日本の凋落の原因。当時は、IT化の遅れ、リスクマネーの欠乏、規制の多さ、などなどマスコミや学識者は挙げましたが「どれも根本原因ではない」「それは表面的原因」と私は感じました。
そうした中、或る米国人エンジニアがヒントをくれました。彼等が設立する会社はLLC、即ち、limited liability companyといいcorporateとは契約法・会社法・会計法・税法が根本的に異なるというのです。corporateとは日本の株式会社に相当しIBMもHPもこの会社形態をとります。
LLCは、大きな範疇ではpartnershipといいます。これとcorporateとの組織論の違いは契約法に端的に現れます。たとえて言うなら結婚契約と金銭契約の違い。つまり、この人といると「幸せ」だから一緒のpartnerになるのであって「お金が儲かる」から一緒になるのではない。だから会社法も「死が二人を分かつまで」と「金の切れ目が縁の切れ目」という具合に異なってきます。専門用語では、partnershipはpartnerの死が組織継続期間を定めるterm companyと呼ばれ、corporateはお金が儲かる限り永続するgoing concernと呼ばれます。
米国出張のたび注意してみると、写真で示した様なLLC専門law firmが米国のどの町にもあることに気づきました。ちょうど日本のどの商店街にも「青色申告会」の看板がある様に。(law firmとは個人や会社の、会計・税務・法務を代行・助言してくれる専門職業者のこと。)
IRS-SOI(米国内国歳入庁 所得統計部)のデータを元に、LLC数推移グラフを作ってその増加の様子をみると、1990年代米国のLLC開業ラッシュは正に「無から有が生まれる」勢いだったことが分かります。また、お金が儲かる限り永続するはずのcorporateは減少傾向にあることが分かります。
2004年、40歳台後半になった私は、出身大学の或る研究室にサーバーを置かせてもらって「LLC制度研究会」というウエブサイトを立ち上げました。会社勤めのかたわら、LLC研究を始めました。
2017年、60歳になったのを機に35年間勤めた会社を退職。LLC研究に専念することにしました。こうして出来たのがこのLLC制度研究会ブログです。趣味の野球観戦や園芸ネタも織り交ぜて、LLCを成立させる根本原因を探っていきます。原因の原因の原因の原因の…と深掘りしていきます。