clm.282:日本語でも優れたreality解説本がある

reality解説本として既に、カルロ・ロヴェッリのReality Is Not What It Seemsと、ペンローズのThe Road To Realityとを紹介した(コラム257267)。

日本語でも優れた<現実>解説本があるのを見つけた。まだ読みかけだが、皆さんにも知ってもらいたいのでメモしておく。

〈現実〉とは何か ― 数学・哲学から始まる世界像の転換 (筑摩選書)、西郷甲矢人 (著), 田口茂 (著) 2019年12月刊。

既に紹介した前二書が欧米の物理学者が書いたものであるのに対して、本書は日本人、圏論(数学)を専門とする西郷甲矢人(はやと)と、現象学(哲学)を専門とする田口茂の共著。〈現実〉という具合にカギ括弧でくくって、普通の日本語で言いう「現実」とは違うことを表している。英語で言う「無冠詞のreality」。

興味を引いた点のメモ書き:
本書は、集合論に「選択公理」という議論百出の公理があることを紹介している。「どれも空でないような集合を元とする集合(すなわち、集合の集合)があったときに、それぞれの集合から一つずつ元を選び出して新しい集合を作ることができる」(wikipedia「選択公理」)というとても単純な「公理」。しかしひとたびこの公理を認めると、「球を適当に分割して、組み替えることで、元と同じ球を2つ作ることができる」(wikipedia「バナッハ=タルスキーのパラドックス」)となってしまうとのこと。私としては「この選択公理を量子論の「波束の収縮」に適用すると、hidden realitiesから、私達がいると感じているようなa naive realityが沢山できることになるのだろうか?」と、多世界解釈(many-worlds interpretation)を思い出してしまった。(^o^)