第41回 量子情報技術研究会(QIT41)

11月18日19日(月火)と、第41回 量子情報技術研究会,、つまり、QIT2019-46~100に参加した。@目白の学習院大学。「Googleが量子超越性を実験実証か」で沸いていたが、特に私の興味を引いたのは、”interconnect”という考え方。.

interconnectは、通常の用法であれば「複数のナニナニを相互に接続する」という他動詞。しかし量子論の専門用語としては、イオントラップ量子コンピューターで、トラップされた複数個のイオンの量子状態を相互に「もつれ」させることをいう。詳しくはQIT2019-52の抄録を参照されたい。

この”interconnect”という用語、実は、フランシスコ教皇の回勅ラウダート・シ英語版に5回も出てくる。その内3回は、”everything is interconnected”という形で使われている(70, 138, 240)。「すべては相互に接続されている」と普通には和訳するところだが、「全ては量子論的に「もつれ」を持たされている」という意味ではないかと、科学と宗教を同時に扱う者達(例:The Faraday Institute for Science and Religion)の間ではもっぱらの評判だ。

ラウダート・シ英語版には、”quantum leap”という用語も出てくる。この用語そのものは、ケンブリッジ大学素粒子物理学教授を務め、後に英国国教会司祭になったポーキングホーンなどが、ラウダート・シ出版以前に考案したもの。もともと「量子論的跳躍」を意味していた。

この用語をフランシスコ教皇はラウダート・シ英語版の103で、「So, in the beauty intended by the one who uses new technical instruments and in the contemplation of such beauty, a quantum leap occurs, resulting in a fulfilment which is uniquely human.」と使っている。訳すと「one(或る霊的人間個体)が新たな技術装置を使って美を生み出そうとするとき、そして、その様な美をとらえようとして見つめるとき、そこには量子論的跳躍が起こり、その結果としてhuman(人間という生物)に特有な或る種のfulfilment(完成)がもたらされる。」となる。

ラウダート・シという回勅は、科学と宗教を両立するものとして認め、その両方を駆使して温暖化など地球環境破壊をくい止めようと警鐘を鳴らすために書かれた。保守的なカトリックとしては異色の回勅。科学を論ずるのだから勿論、最新の科学知識を盛り込んでいなければならない。でないと、宗教者がおかしな科学を論じていると軽くあしらわれてしまうからだ。

・・・というような場違いなことを、技術研究会の場でアレコレと考えてしまった。

追記:ラウダート・シを読むなら英語版に限る。14カ国語版がありラテン語版あるが、最新科学をラテン語で表すのは至難の業だろう。現在、科学の世界標準語は英語。だから最新の科学を論じようとすれば英語となるのが自然。14カ国語版のラウダート・シ103節を調べたが、”quantum leap”の記述は英語版にしかなかった。ドイツ語版になかったのはチョット意外だった。ハイゼンベルグ先生、御免なさい。というのは、彼は熱心なドイツ福音派のクリスチャンだったし量子力学の創始者の一人だったから。

なお、”quantum leap”という言葉は、Ngramを調べたところ、20世紀初頭の量子力学黎明期からあった言葉だと分かった。上記の記述を「ポーキングホーンなどが」と修正しておいた。