前前々回コラムで、持ち家が帰属家賃という仮想的「生産」を行っているとする現行経済システムの虚事を批判したマッツカートの主張を紹介した。
その矢先、昨日(20210705)の日経新聞夕刊一面に、現行経済システムにおける景気刺激策の一つである「持ち家促進政策」が終焉を迎えているのではと思わせる記事が載った。(日経有料会員ならここからアクセスできる)
記事のポイント:
2002年から2020年の約20年間で、住宅ローン返済世帯の収入は約5%の増加に留まっているが、住宅価格は約40%上昇した。結果、住宅ローン返済世帯が抱える負債が貯蓄を上回る「負債超過」の額が約20年間で4割増えた。また、日銀の低金利政策と政府の住宅ローン優遇税制などによって住宅ローン借入額が膨らんでおり、家計が長期的に抱えるリスクが増している。住宅ローンが老後の生活を圧迫する虞(おそ)れもありそうだ。
記事の注目部分(金融緩和策と住宅ローン減税):
金融緩和策によって住宅ローン金利は歴史的な低水準にあり、借入のハードルが下がった。中でも変動金利は銀行の優遇策もあって年0.5%を切る金融機関も珍しくなくなっている。住宅金融支援機構の21年4月の調査では住宅ローンを借りた人の68%が変動金利を選択した。/ 一方、住宅ローン優遇税制では条件を満たせば当初10年間(消費税10%が適用される住宅では一定条件を満たせば13年間)、年末の借入残高の最大1%の税額控除が適用され、返済金利より減税額の方が大きい「逆ざや」状態になりやすいことも借入額の増加につながっている可能性がある。
私の感想:
今、住宅ローンを組もうかと考えている若い世代に是非読んでもらいたい記事だ。かつて住宅ローンを組んだ熟年世代でも、定年退職しても住宅ローンを完済していないケースは増えている。こうした場合、ローンが残っている持ち家を「リバースモーゲージ」あるいは「セール&リースバック」して老後の生活資金を工面することが「既に」常態化している。アクチュアリー数学を駆使する金融機関が、総体的には「儲けにつながる」と見ているから成立している話であり、こういった老後資金工面方法ですら、いつ「終焉」を迎えるか分からない。上記の「住宅ローンが老後の生活を圧迫する虞(おそ)れ」は既に現実のものとなっている。若い世代は、こういった「現行経済システム崩壊の予震」に感度良くアンテナを張り巡らして、「住まう家」を決めていって欲しい。